ラフマノニフのピアノ協奏曲第3番を聴こうと思います。
いわゆる名盤の中ではピアノはアルゲリッチ、指揮はリッカルド・シャイー、ベルリン放送交響楽団のライブ録音が有名です。確かにマルタ・アルゲリッチのテクニックと情熱で迫り来るものがあります。
そして私のお気に入りはアンナ・フェドロヴァによる2023年5月の最新アルバム、冒頭のAppleMusicのリンクです。
テクニックと情熱
アンナ・フェドロヴァのテクニックは疑いようもありません。
私がいろんな演奏を聴いて感じたことは、テクニックはあっても、熱量がないとこの曲は途端につまらないものになってしまうということです。情熱がないと音がただ重なるだけになってしまいます。不思議ですが率直な感想です。
アンナ・フェドロヴァの演奏はテクニックに加えて情熱も充満しています。
他の演奏
他の演奏では、強弱や起伏を強めたり、テンポを速めたりして、何とか作品として完成させようとしている演奏もあるのかもしれません。
有名な曲で人気もあるため、アルバムも多数存在します。
いくつか気になった演奏を挙げると以下の通りです。
- Rachmaninoff: Piano Concerto #2 & 3 カティア・ブニアティシヴィリ , パーヴォ・ヤルヴィ & チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
- Rachmaninov: Piano Concerto No. 3 ミッシェル・フランソワ , ヴァレンティーナ・リシッツァ & ロンドン交響楽団
- Rachmaninov: Piano Concertos Nos.3 & 4 ニコライ・ルガンスキー & Russian State Symphony Orchestra
- Rachmaninoff: Piano Concertos Nos. 1-4, Rhapsody on a Theme of Paganini (Live) Lise de la Salle, Philharmonia Zurich., ファビオ・ルイージ
- Rachmaninov: Piano Concerto No. 3 ワレリー・ゲルギエフ , ロイヤル・コンセルトヘへヘボウ管弦楽回 & ベフゾド・アブドゥライモフ
これらの中で注目すべきは
ピアノはカティア・ブニアティシヴィリ 、指揮は パーヴォ・ヤルヴィ、管弦楽がチェコフィルによるものです。暴れ馬のようなピアノをパーヴォ・ヤルヴィとチェコフィルが乗りこなした名演です。
次に紹介するのは、ヴァレンティーナ・リシッツァです。熱気に満ちており、これまで聞いた中では最も早いテンポで演奏されています。彼女の情熱には聴く価値があります。
ニコライ・ルガンスキー の演奏は大音量で力強さが際立っています。
Lise de la Salleはラフマニノフの曲をまろやかに妖艶に弾いており、賛否が分かれるかもしれません。
ベフゾド・アブドゥライモフの演奏は清く軽やかで若々しい演奏です。今後の活躍が期待されます。
アンナ・フェドロヴァとアルゲリッチ
これらを圧倒しての名演がアンナ・フェドロヴァとアルゲリッチの演奏です。
アンナ・フェドロヴァ
アルゲリッチ
アンナ・フェドロヴァとアルゲリッチの演奏は他を圧倒しているというしか言いようがありません。
どちらも優れたテクニックであり、気力にあふれる演奏で、冒頭からスパートします。最後まで走りきれるのかしらと思ってしまいます。最後の最後まで気力は尽きません。第三楽章のはじめでも圧倒されます。
アルゲリッチはロシア音楽の美しさみたいなものとは別の領域にいりこもうとしています。彼女は天才であり、それが彼女の使命です。
音楽は形式にとらわれてしまうと、つまらなくなります。クラシック音楽が長い歴史を持ち、世界中で愛される理由は、こんな天才が新しい演奏を切り開いて、多くの人々に感謝されるからです。楽しい夢をありがとうと。
一方、アンナ・フェドロヴァはそんなことはせずに、ロシアの音楽を愛しながら、音楽を通じて夢を語ろうとしています。
ただただ生真面目に演奏しているように思います。
でも、形にはまって身動きできないわけでもありません。
身動きできない音楽では感動しません。感動するということは、形だけだはない何かがあるということです。
それは彼女のロシア音楽への愛情なのだと思います。
アンナ・フェドロヴァは美しいロシア音楽を通じて多くの人々に夢と希望を感じてもらいたいと願っています。
まとめ
アンナ・フェドロヴァとアルゲリッチの演奏は、他の演奏を圧倒しています。
彼らは優れたテクニックと情熱を持って演奏し、冒頭から尽きることなく魅了します。最後までエネルギーを失わずに演奏し続ける、彼らの演奏に感謝します。
どちらの演奏も素晴らしいのですが、ロシア音楽への愛情と熱意を持ちながら、作品に真摯に向き合っています。
真摯さと愛情と情熱のアンナ・フェドロヴァが私のベストアルバムです。
